第1章 悪魔の正義
「……見てしまったなら、致し方ないな。
生かして還さない。」
ノアルールはその声に目を見開いた。
男は残酷な目で見下ろし、刀を手に振りかぶる。
男の瞳は死んだ目をしていた。
―私、死ぬんだ―
ノアルールは恐怖で思考が麻痺し、不思議と死が怖いと感じ無くなった。
その時
「ルーラ、待つんじゃ。」
先が二つに別れるオレンジと黄色のピエロの帽子をかぶる、下着がちらっと見える、ところどころ破けた露出の多いピエロの服を着た女が止めに入ってきた。
「そやつはならん!
ルーラが先程殺った奴のみだ。
余り、関係のない輩を殺すでない!」
ルーラと呼ばれる男はちっと舌打ちをして、瞳に光が入る。
「…立て。」
ルーラはノアルールにスッと手を差し伸べたが、てをつかむとそのまま腕を引っ張り、乱暴に立たせた。
ルーラは非常に苛立ち、ノアルールを見て言った。
「命拾いしたな。
オーナーがいたからだな。」
「……」
ノアルールは黙りながら、シスターの無惨な死体に近づく。
「おっと、あまりまじまじ見るもんじゃない。」
ノアルールはオーナーと呼ばれる女に手で視界を遮られた。
そして、女に肩を持たれて身体の向きを180度変えられた。
「これは後ほど話すとして……とりあえず、私はグラス=スパークル。
王認定の正規ギルド、スパークルタワーのオーナーじゃ。」
「スパークルタワー…?」
グラスはうんうんとうなずき、ノアルールの両肩を持って、ルーラの方向に向けた。
「あやつはルーラ=コロラド。
…あまり悪い奴じゃ無いんじゃ。
許してやってくれ。」
グラスはにこにこして、ノアルールに話しかける。
ルーラはまた、ちっと舌打ちをして武器を鞘に納めた。
―ここは教会の近くにある墓地。
血だらけのシスターは棺桶に入れられた。
ノアルールは黙るしか無かった。
ルーラとグラスがシスターの入る棺桶が土の中に消えて行くのを眺めながら、花束を両手で拾いなおし、二つの花束をぎゅっと抱き締めた。
混乱が収まらず、気持ちの整理がつかないノアルールは言った。
「少しだけ、用事済ましても良いですか……?」