第4章 踊り狂った歌姫
ー夕刻。
買い物帰りのブロッサは、両手に重い荷物を持って人気が無くなった道を歩いていた。
フフ♪
ラジオで聴いた最近流行りのシャーナの曲を鼻で歌っていた。
ーブロッサは、双子の兄と父親と暮らしていた。
しかし、肉親である父親の酒癖と暴力が尽きず、ブロッサは血の繋がる兄弟に庇われ、一人で孤児院まで逃げてきた。
それから、孤児院に来たあとグラスから兄たちが亡くなったと聞いて涙した。
自分が何故生かされているのか、彼女は分からない時もあった。
だが、シャーナの曲を聞き、感動した。
自分が兄たちの代わりに生きようと前向きな気持ちになった。
孤児院の生活は充実していて、弟や妹みたいに年下の子供たちの面倒を見ていた。
あと、孤児院の決まりで十三になるまでは1人の外出は許されない。
晴れて誕生日を迎えたブロッサは、この時を待ちわびた。
そして、お小遣いを握りしめて、シャーナのグッズを買ったり、自分より歳の小さい子供たちにお菓子をいっぱい買って行った。
辺りは既に真っ暗になり、月が闇夜を照らし出した。
♪あなたは強い人だよ
そう言って勇気をあげる
ブロッサはラララと歌い、自分を追う黒い影に気がついた。
「誰?
誰かいるの?」
いつの間にか道に迷い、見たことない辺りを見回す。
すると、路地裏から少女の顔が出てきた。
歌を歌いながら、シャーナがブロッサに近づいた。
聞きなれた声にブロッサは、あ、と声を漏らした。
「…シャーナさん?ー」
瞬間、男達に捕まった。
口を手で塞がれ、四肢をを拘束されたブロッサは息も出来ず、意識が遠のいた。
ーノアルールは嫌な予感がした。
と、言うよりしてならなかった。
ノアルールとグラスは、子供たちの晩御飯の準備をしていた。
リビングでは子供たちがワイワイと騒いでいる。
ブロッサの帰りが遅い。
時計はもう八時になる。
「グラスさん、私、外に出ていってブロッサちゃんを探しに行きます。」
あまりにも心配と嫌な予感がして、ダイニングから飛び出した。
「ノアルール!?
どこに行くんじゃ!!
ルーラが探しに行っているんだぞ!」
「でも、私も探さないと!
嫌な予感がしてならないんです!」
グラスはそうかと嘆いた。
ノアルールはグラスから貰った鮮やかな刺繍を施された鞘に収める短剣を手に、フードつきのポンチョを着て外に出た。