第4章 踊り狂った歌姫
「はっ、どっかのシスターの手口とそっくりだ。」
ルーラは嫌味っぽく、淡々とノアルールの耳元で言って笑い出した。
ノアルールは、泣き出した。
物心ついた時から一緒に居たシスターの事を思い出して。
だが、ルーラの手で殺められ、優しいシスターの悪口を言われて、悔しくてたまらなかった。
「…シスターは、私のシスターはそんな人間じゃない!!!!!」
ルーラはいきなり叫んだノアルールに、思わず言葉を詰まらせた。
グラスは俯き、子供たちは、なんだなんだとちらほら窓から顔を出した。
「シスターは分かって居たんだ…!
私に唯一話してくれたの!
……いつしか自分は殺されるんだって…。」
…ひっ…ひっ…とだんだんノアルールの泣きが強くなる。
「シスターは、自分が"悪い事"をしていた事ぐらい自覚していた!
後悔も……
ただ、私はシスターの"悪い事"がなんだったのか分からず、ルーラさんに殺された時に初めて知ったの!!」
ルーラはそれを聞いて、鼻で笑った。
「違うな。
俺は"悪"が嫌いだったから、死んで直させたんだ。
それにー」
グラスはルーラに近づいて、ルーラの肩を左手で叩くと言った。
そして、頭を横に振った。
ー話すべきではないぞ。
グラスの右手にある拳銃の銃口が鈍く光る。
ルーラはそれに気がついたのか、口を紡いだ。
「とにかく、二人とも止めないか?
子供たちがみておろぅ。
あんまり騒ぎ立てるな。」
二人にしか聞こえない重い声でグラスは険しい顔をして言った。
子供たちがわらわらと三人に近寄る。
あちらこちらから、ノアルールを心配する声が聞こえる。
グラスは、子供たちの顔を見る度にニコニコして言った。
「こらこら、誰が部屋から出ていいって言った?」
子供たちはグラスの言葉にワイワイと騒ぎながら部屋に戻っていった。
グラスはノアルールに行ってきてとジェスチャーし、ノアルールは後を追いかけた。
すると、少女1人がグラスに近づいた。
先日13歳になったブロッサという少女だ。
「シスター!
私は今日から1人でお使いに行けるのよね?」
グラスは何かを思い出して、メモと金銭を持たせた。
孤児院のここは、1人の外出は13歳になってからいいという決まりがある。
「早く帰って来るのよ。」
日が沈みゆく時間、1人の少女が門を潜った。