第3章 誓いの剣と口紅と
ノアルールはグラスの暖かさに包まれ、涙が止まらなかった。
ちょっとした幸福な時間。
一部始終、二人の話を聞いた人物はことごとく奪い去った。
「ちょっといいか?
……ノアルール。」
「!?」
ノアルールの肩を叩く冷ややかな声。
ノアルールはゆっくりと振り向いた。
「ルーラさん……」
「ちょっとこっちに来て。」
ノアルールはルーラを見て怯える。
にっこりしているルーラのオーラは殺気立っていた。
流石にグラスはノアルールをルーラから守る。
「やめんかルーラ。
子供たちの前で!!」
ルーラは不思議そうに見ている子供たちを見て、吐き捨てるように言って立ち去った。
「じゃあ、あの場所でまっているよ、ノアルール。」
ノアルールはルーラを恐れた。
笑顔の底で何かを隠しているような怖いものがあった。
ノアルールはルーラに指定された場所についた。
“フラワーズギフト”というケーキ屋の店内はテーブルがところどころにあり、入って直ぐにケーキが並ぶ陳列棚があった。
「いらっしゃいませ。」
金髪の密編みをしたノアルールと変わらない年ごろの若い女の店員は、にこやかにノアルールに言った。
ノアルールはルーラを見つけると、重い足取りで向かった。
「……」
唾をごくりと飲んだノアルールは、次第に視線がぐらぐらと左右に揺れた。
ルーラは席につけといった。
「いつまでシスターシスターといっている?」
「……」
ノアルールは席に座ると、ルーラを見る。
ノアルールが黙り込むと、ルーラは淡々と話を続けた。
「まだ、16だ?
……だからなんだ。
俺は11の時に人を殺したんだぞ?
それも、肉親をな。」
ノアルールは、震えて下を向いた。
どす黒い闇に包まれたルーラの瞳に光がない。
「貴様の慕う人間が人として悪い事をしても、自分の手を汚してまで止めないだろう。
そうして人に手を汚させて置いて、平和を語ろうなら、貴様も殺してやる。」
ルーラは本気の目だった。
ルーラの言うことがあながち間違っていないと、ノアルールは思った。