第3章 誓いの剣と口紅と
―ここは孤児院の敷地内。
ノアルールは子供たちの面倒を見ている。
グラスは髪まとめたみつあみ姿で、シスターの格好をしながら、子供たちと歌を歌っている。
ノアルールはグラスの変わりように驚いたが、それでも子供たちの相手をしていた。
「サクラおねぇちゃん~抱っこ~」
「ヴィッツは本当に甘えん坊さんだね。」
ノアルールは反応すると、男の子を抱っこした。
ノアルールは本名を隠している。
というのは、グラスが隠さないといけないといっていたからだ。
サクラとは、ノアルールの仮の名前だ。
『ギルドに加入したからには、自分の本名は明かせないんじゃ。
くれぐれも公に自分の本名を言うもんじゃないよ。』
「ねーサクラおねぇちゃん、ルーラお兄ちゃんは?」
「ん?さあね、分からないな。」
「ぶぅ」
だが、不思議だ。
ルーラはなぜルーラと明かして良いのか。
それが疑問に思ったノアルール。
「はいはーい、それじゃあ皆さん、お昼ご飯にしましょうね~。」
グラスがパンパンと手を叩くと、子供たちははぁいと返事をし一斉に手洗い場へかけていき、手を洗う。
ノアルールは、まぁいっかと、子供たちの楽しそうな様子を見てあきらめた。
グラスは口調を変えて、ノアルールに言った。
「ガキンチョの世話が大変で仕方ない。
う~肩が凝ったのう……」
グラスはゴリゴリと肩をならし、右手で左肩を押さえる。
「まさか、こんな仕事をするなんて思って居ませんでしたよ。」
ノアルールは笑顔で、だがどっからか寂しいそうな声音で言った。
「まるで、シスターになりきった感じで……」
「済まんな、ノアルールに知らない真実を言ってしまってのぅ。」
ノアルールから溢れる涙に、グラスはため息をついた。
「まだ、16のお前に辛い事をしてしまったな……」
グラスはノアルールを慰めた。