第1章 はじめまして
オレンジ君が吐いた。
乗り物酔いするタイプなのだろうか。
割と冷静な顔した姉から投げつけられた三角にたたまれたレジ袋を持って一番後ろの席まで走る
「田中さん、予備のジャージ有りますか?」
「…!お、おう」
ショックで白目向いてた田中さんは正気を取り戻したようだ
良かった。
「之に入れて新しいのに履き替えといて下さい、私オレンジ君どうにかします」
と伝えてレジ袋を投げ渡せば、女の子の前だというのに、それでも姉には見えないように着替え出す。
私の前でも遠慮して。
虚ろな表情のオレンジ君を窓際に寄せ、窓を開けてやれば表情が少し和らいだ。
「オレンジ君、之。どうぞ」
田中さんの席にあった飲みかけの水と酔い止めを渡す。
「最初から飲んでおいて下さい」
と、すこ少し微笑み言えば、「あ…有難う………」と死にそうな声が帰ってきた。
之で大丈夫だろう。
席に戻る序に田中さんの横に転がっていたポッキーを一本もらった
一件落着、多分。
席に戻り、ポッキーを食す私にもう一度山口さんが聞いてきた。
「災難だったね……あ、で、何をやってるの?」
そんなに気になるのかな、よく分からない。
「ひょっひょまっへへくらはい」
咥えたポッキーのチョコのついていない所を人差し指で押し、商品名のとおりポキポキ、と食べ進んでいく
「────私は、」
飲み込めば口を開く
「柔道、やってます」
斜め後ろの山口さんにそう笑いかければ目をぱちくりさせている。この表現がぴったり合うくらいにはぱちくりさせている。
「え、え、名前ちゃん柔道やってるの…?」
「はい」
そう言えば柔道ももう7年やっている。
今迄生きた人生の半分をかけたなぁ、なんて呆然と考えていれば、「君のその体格で柔道とか出来る訳無いデショ」とか月島さんが鼻で笑う
「そうなんですよね、私、まだまだ弱いんすよ」
何て困り顔で笑えばこれまた決まりの悪そうな顔で見下された