第1章 序章『Special Birthday』
「そりゃ逆だな。アルバスが日本語を話せるんじゃなくて、お前が英語を話せるんだよ。だから、アルバスが話してる英語を、まるで日本語を話しているように聞こえるくらい理解してるって事だ」
「は、はぁ?そんなまさか!私英語の勉強なんてまともにした事ないし!」
「なんでか知りたいか?」
ぐい、と突然蓮の顔が近づいてきたので、ユウラは神妙に頷いた。
「お前は…天才なんだ」
「んなアホな」
「あれ、否定が早いですね。もっと自分に自信を持って!」
上手くはぐらかされた気がして、納得の行かないユウラは唇を尖らせていたが、やがて蓮を睨んでいてもなんの解決にもならないと、諦めた。
「……そのうち嫌でも分かるよ」
「え、なに?」
「なんでもねぇ」
ふいと顔を背けた蓮を、ユウラは不思議そうに見つめた。そこで、今まで黙っていたダンブルドアが、ぽんと手を叩いたところで、二人の注目は再び彼に集まる。
「さてと、そろそろ時間じゃ。本題に入ろうかの」
「……どう、してもか?」
突然蓮の顔が再度歪んだ。ダンブルドアの表情も心なしか若干曇ったような気がする。
「すまない、蓮。これも運命なのじゃよ」
「あぁ……あぁ、分かってる。大丈夫だ。今度こそ守り抜いてやるよ」
「うむ。わしも出来る限りの協力をしよう。---さて、ユウラ」
急に名前を呼ばれたので、ユウラは驚きで肩を震わせた。顔を上げると、目の前に一通の封筒が差し出されている。ダンブルドアからであった。
「誕生日おめでとう。わしからのささやかなプレゼントじゃ」
ダンブルドアが悪戯っぽくウインクをした。ユウラは普通の手紙よりも少し厚みのあるそれを受け取ると、蓮を見やった。しかし蓮は一瞥をくれただけで、何も言わない。
「家に着いてからでも、ゆっくり蓮に説明してもらっとくれ。それでは、わしはもう行くとするかの」
「あぁ、んじゃ、またな」
「また九月に会おう」
そう言ってまたあの温かい笑顔を見せると、老人は闇に溶けていった。
「蓮、どういう事?」
まるで問い質すかのように、険悪な面持ちでユウラはそう尋ねた。どこかぎこちない雰囲気が、二人の間を漂っている。すると、蓮は大きな溜息をひとつついた。
「とうとうこの日が来ちまったんだな」
「え……?」