第1章 序章『Special Birthday』
永遠に続くかとまで思われたその静寂は、思いの外すぐに何者かによって破られた。気が付くと、二人の前におかしな格好をした老人が立っている。
穏やかな優しい目をした男性であったが、その身なりはあまりに奇抜だ。真っ白な長い髪にひげ。そしてまた長いローブに紫のマントを羽織っている。瞳はビー玉のような淡いブルーで、半月の眼鏡をかけている。
ユウラはまるで絵本に出てくる魔法使いのようなこの老人に、少なからず懐かしさを感じていた。
「よく来たのう。蓮、ユウラ」
「……だ、誰?」
「アルバス。約束通り、こいつの十一歳の誕生日にここへ連れてきたぜ」
「ご苦労じゃった」
老人は優しく微笑んだが、蓮はにこりともしない。ユウラは顔見知りのようである二人を、不思議そうに交互に眺めた。
「久しぶりだな。相変わらずか?そっちは」
気まずい雰囲気を一蹴するかのように、また、何かの話題を逸らすかのように、蓮がつとめて明るくそう問うた。
「ふぉっふぉ。うむ、相変わらず騒がしくて、飽きんよ」
「だろうな」
ようやく蓮が笑う。まるで過去のおかしかった出来事を笑っているようでもある。
ユウラは取り残されている感覚を否めず、思わず咳払いをしてみせ、二人の注目をこちらに向けた。
「ちょっとちょっと!なによ、二人して私の存在無視してくれちゃってさぁ!」
「悪ぃ悪ぃ」
蓮が苦笑する。老人が相変わらずの優しい笑顔で自分を見ているので、ユウラは顔が熱を帯びるのを感じた。
「誰なの?このおじいさん」
「あー、こいつはアルバス・ダンブルドアってんだ」
「へぇー。日本語が随分上手なのね」
「……?」
なんとも言い難い、しかし先ほどの重苦しいものとは違った沈黙が流れた。蓮と、ダンブルドアというらしい老人は、不思議そうにユウラを見ているし、彼女もまた同じく彼らを見返している。
「何言ってんだ?お前。アルバスは日本語なんか話せねぇぞ」
「へ?」
ユウラの頭は既に混乱していた。
この老人はどこからどう見ても外国人だ。しかし、ユウラにはどうしても彼が日本語を話せるようにしか聞こえないのだ。すると、それを聞いた蓮が口を開いた。