第2章 第一章『A Fateful Encounter』
ある、悪の道に走った魔法使いがいた。二十年ほど前の話だ。次々にたくさんの魔女や魔法使いを仲間にした男は、やがて魔法界を支配するようになったのだ。
そして、あるハロウィンの日、一歳になったばかりのハリーの家に、男がやって来た。
どうやら、ハリーの両親を仲間に入れようと目論んだらしい。
だが、両親は断った。勇敢にも戦ったのである。しかし……殺されてしまった。もうひとり、女性の死体があったそうだが、本に多くは語られていない。
そうして男はハリーをも殺そうとした。だが、驚くべきことに、ハリーは死ななかったのだ。何百人と殺してきた魔法が、ハリーだけには効かなかった。そして出来たのが、あの額の傷だというわけだ。
「だから、ハリーを知らない人はいないの」
ユウラの心臓は高鳴っていた。
「その男の名前って?」
「…この名前を口にしてはだめよ?みんなは例のあの人って呼んでいるから。---ヴォルデモートよ」
更に脈打つのが早くなり、ユウラを激しい頭痛が襲った。
-----……
「ユウラ…どうして君がここに」
「…誰?」
「リリー!ジェームズ!」
「君を殺したくはなかった」
「…トム……」
「ハリー!」
まるで走馬灯のようにコマ切れで蘇る記憶を、意識を取り戻したユウラは、やはり覚えていなかった。
第一章 完