第2章 第一章『A Fateful Encounter』
おかしい。今、声が二重に聞こえたような気がしたが。ユウラは自分に向けられたものだとも知らず、首を傾げた。
すると、軽く肩に手が置かれる。
「手伝いましょうか?」
「へ?」
立っていたのは、顔のそっくりな、赤毛の目立つ双子であった。
悪戯っぽい笑み浮かべている。
「あ、えっと、ありがとう」
「なんのなんの。おい、ジョージ」
「合点」
二人は軽々とトランクを持ち上げてくれた。
「どうもありがとう!助かっちゃったわ。私、ユウラ・サエナギ。あなた達は?」
「俺はフレッド・ウィーズリー」
「同じく、ジョージ・ウィーズリー」
「よろしくね」
「はい!姫!」
ユウラは微笑んだまま固まった。
「……姫?」
「はい、姫!」
双子は何故か目をキラキラと輝かせ、嬉しそうに頷く。ユウラは鳥肌が立つのが分かった。
もう一度お礼を言うと、逃げるようにして列車の中を走っていく。
残された双子は不思議そうに顔を見合わせた。
「ひ、姫ってなによ姫って!あぁ恥ずかしい!」
顔が赤くなるのを自分自身に誤魔化すようにしながら、ユウラは空いているコンパートメントを探した。が、なかなか見つからない。
わいわい盛り上がっているところに入るのにも気が引けた。
「ここ、空いているわよ」
そう申し出てくれたのは、ブロンドのくせっ毛を腰の辺りまで伸ばした、可愛らしい少女であった。
コンパートメントの扉を開け、中から少しだけ顔を出している。
ユウラはその少女に微笑みかけると、お邪魔する事にした。
「あなた、美人ね」
「えぇっ!?そ、そんな事ない!」
「ふふ、ごめんなさい。本当に美人だと思ったから、つい口に出ちゃったの」
ユウラはこの少女を抱きしめたいと言う怪しげな衝動に駆られたが、なんとか我慢し、自己紹介をする事にした。
「よろしくね、ユウラ。私はハーマイオニー・グレンジャーよ」
彼女と話していてよく分かったのは、とても聡明で、知識をつけるという行為そのものを好んでいるという事だ。ユウラはなんとなくこの呼び方が好きではなかったが、ハーマイオニーはいわゆる「マグル」で、ホグワーツからの手紙を受け取った時は、両親と泣いて喜んだという。