第2章 第一章『A Fateful Encounter』
そう言うと、オリバンダー老人は棚を漁り始めては、次々と二人に様々な杖を試させた。が、二人が持った瞬間に取り上げてしまったりして、なかなか決まらない。
すると、なにやら蓮がオリバンダー老人に耳打ちをする。そうして老人は新たな杖を持ってきた。
「めったにない組み合わせじゃが…柊と不死鳥の羽根の組み合わせと、桜と不死鳥の羽根の組み合わせの杖じゃ」
そう言ってユウラには桜の杖を、ハリーには柊の杖を渡した。それを手にとった瞬間、ユウラの指先が突然熱を持った。そして目を瞑ると、頭の中に、ある記憶が、まるで液体のように広がる。
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「これが私の杖か」
「…蓮……これを、しっかり持っていてくれ……」
「この杖!絶対これ!」
「蓮……この杖…誰かに渡したりしちゃ、やだよ…?」
「この杖にする!」
「ちゃん…と……持っててね?あの…子に……」
「ユウラ?」
「…これがいい」
「ええ、そうでしょうともそうでしょうとも」
オリバンダー老人は満足そうに頷いている。見ると、ハリーもそれに決めたようだった。
「しかし、不思議な事もあるもんじゃ」
「何がです?」
「ポッターさん。わしは売った杖は全て覚えておる。お二人の杖は、同じ不死鳥が三枚羽根を提供してくれたうちの二枚で作った、いわば兄弟杖なのじゃ。そして残りの一枚を使ったもうひとつの兄弟杖を持っておるのが、ポッターさん、あなたにその傷を負わせた張本人なのじゃよ」
オリバンダー老人の目は確実に真っ直ぐハリーの額の傷跡をとらえている。そして、ハリーがごくりと生唾を飲み込んだのを、ユウラは見逃さなかった。
「それじゃあまた九月にね!」
「うん。同じ寮になれるといいね!」
ハリーは新学期までの一ヶ月、ダーズリー家で過ごさなければならないらしい。ユウラは少し心配になったが、口には出さなかった。
そうしてハグリッドとも別れ、ユウラと蓮は新学期まで泊まる予定のロンドンのホテルへと向かった。
「しかし今日は疲れ……」
蓮は途中で話すのをやめた。ベッドの上で、あまりにも気持ちよさそうにユウラが眠っていたからである。大きく開けた口の端から涎を垂らし、いびきをかいているユウラを、蓮は半ば呆れたように見ていたが、やがて優しく微笑み、そっと布団をかけてやる。