第2章 第一章『A Fateful Encounter』
小鬼というだけあって、顔は怖いが、背丈はユウラの膝ほどまでしかない。それでいてちょこまかとせわしなく働いている様は、可愛らしくもあった。
蓮は適当に手の空いている小鬼に声をかけると、どこから出したのかなにやら金色の鍵をその小鬼に渡した。小鬼は鍵を受け取ると、それをあらゆる角度から物色し、やがて頷く。そして二人をトロッコへと案内した。
「なんでトロッコ?」
「グリンゴッツはロンドンの地下数百キロのところにあるし、金庫だってごまんとある。お前、歩けるか?」
「無理ね」
ユウラは納得したように頷いた。
「トロッコかぁ。なんかインディージョーンズみたっ…いぃぃぃぃぃ!!??」
突然走り出したトロッコは想像を絶する猛スピードであった。はじめは驚いていたユウラも、無料で乗れるジェットコースターとでも思う事にしたのか、楽しんでいた。鴉である蓮は、勢いで飛ばされかねないので、ユウラの懐に入っている。
「お前胸でかいな」
「放り出すよ?」
「ごめんなさい」
トロッコが到着したのは、『007』と書かれた金庫の前であった。
「おおう、ジェームズ・ボンド」
「さっきからなにを言ってんだお前は」
小鬼が錠を外し、指をスーっとなぞるように隙間に入れると、金庫の扉が開く。
ユウラは思いがけず、あまりの眩しさに目をつむった。そしてゆっくりと開くと、見た事もない大量の金、銀、銅貨があちらこちらに山積みになっている。
「……場所間違えて」
「ないからはよ入れ」
蓮に蹴られ、金庫に足を踏み入れる。
迷った様子のユウラに、蓮がこの世界の通貨の説明をしてくれた。
「金貨はガリオンで、銀貨がシックル。でもって銅貨がクヌート。十七シックルが一ガリオンで、一シックルは二十九クヌートだ」
「どのくらい必要?」
蓮に言われただけの金をバッグに詰め、二人は小鬼の待つトロッコへ戻った。
「必殺!!ユウラボイン!!」
「もういいです」
銀行を出ると、ハリーと青白い顔をしたハグリッドが待っていた。
「まずは制服からだな。……おい、ハグリッド、大丈夫か?」
「ここのトロッコは何度乗っても慣れん。すまんが、漏れ鍋に戻って元気薬を引っ掛けてきてもええか?」