第2章 第一章『A Fateful Encounter』
逃げるようにして奥の扉を目指す。ユウラはそこで店中が自分を見ている事に気が付いた。
奥の扉は外に繋がっていて、そこには先客の姿があった。その先客が突然の物音に驚き、振り返る。
「レン!」
「ハグリッド!」
また蓮の関係者らしい事が分かると、ユウラはむくれた。そのハグリッドと蓮が呼んでいた男はひげむくじゃらで、とんでもない巨漢だ。ボロボロのコートを着ているが、蓮と話している様子からは悪い人だとは思えない。そしてまた彼にも、ユウラはどこか懐かしさを覚えていたのである。
だが、ユウラはそちらよりも、ハグリッドの隣で戸惑っている少年の方が気になった。自分と同い年ほどで、丸い眼鏡をかけている。
ユウラはすっかり話し込んでいる蓮とハグリッドを横目に、その少年に話しかけてみる事にした。
「初めまして。私、ユウラ・サエナギっていうの。あなたは?」
「あ、初めまして。僕はハリー。ハリー・ポッター」
ハリー・ポッター
頭の中で超音波のような音がしたかと思うと、突如激しい頭痛がユウラを襲った。
まるで意識が何者かに強引に引っ張られているような感覚。
-----………
「可愛いわ」
「でしょう?」
「そりゃあ、僕とリリーの子だもん」
「はいはい」
「でも、本当ジェームズにそっくり」
「瞳の色はリリー譲りだな」
「なんだか僕も赤ちゃん欲しくなっちゃったなぁ」
「……盗むなよ?リーマス」
「……ちっ」
「舌打ち!!!」
「そうだわ。ねぇ、ユウラ、シリウス。この子の名前、考えてきてくれた?」
「もちろん!じゃあ言うわよ。せーの……」
「ハリー……」
その名を呟くと、意識は自分の中に帰ってきていて、今見たなにかの記憶は綺麗に消えていた。
気が付けば、蓮とハリー、ハグリッドがこぞってユウラの顔を覗き込んでいる。
「大丈夫かよ、ユウラ」
「へ?あ、うん。何でもない」
「ユウラ。ハグリッドだ。よろしくな」
「こちらこそ」
ハグリッドの掌は自分のより三回りほども大きくて、彼と握手をした後はしばらく手が麻痺していた。