第2章 第一章『A Fateful Encounter』
しかし、ずっと人の少ない田舎も田舎の小さな村で育ってきたユウラにとって、ロンドンはさほど異世界と変わらないのかもしれない。
「うっひゃー!すごいよ蓮ー!人がいっぱい!」
「はいはいはい」
「ふはは、人がゴミのようだ」
「そういうのいいです」
呆れた様子の蓮であったが、こんなにはしゃいで楽しそうなユウラを見たのは久しぶりの事であったので、内心喜んでいた。
空港から出ると、更に賑やかで、大勢の人が忙しそうに歩いている。
「よっしゃ。さっさとやる事済ませちまおうぜ」
「うん!」
二人はたくさんの店が立ち並ぶ一段と賑やかな通りを歩いていた。
ユウラは見るもの全てに目を奪われていたが、蓮がなんとか引っ張って歩かせている。
---ところで、もしも蓮がお茶を飲みたいとでもいうのなら、喫茶店は周りにいくらでもある。それなのに、何故我々は誰かに言われなければ気がつかないような、こんなにみすぼらしい店の前にいるのだろうか---
ユウラは思わず蓮を見たが、彼は気にするでもなく、確実にその店に向かっている。
「ドア開けてくれ」
「ねぇ、ここに用があるの?」
「あぁ。ほら、マグルに見つかる前に」
マグル?と聞き返そうとしたが、急かされてしまったのでその質問は飲み込む事にする。
錆びた扉は重たくて、何だか嫌な音がした。
これこそが異世界だ、とユウラは確信した。いや、きっとこの店の存在に気付かず歩いている人を捕まえてここに入れたら、彼らも同じ感想を持つだろう。
中はパブのようで、酒臭い。しかし、気になるのは中で飲んでいる大人たちだ。まるで、そう、ダンブルドアのような---それよりは大分貧乏臭くはあるが---妙ちきりんな格好だ。
「ここは『漏れ鍋』って店だ」
「へぇー」
「よう、トム」
蓮が突然店主のような男にそう声をかけたので、ユウラは驚く。しかし、驚いたのはユウラだけではないらしい。
「やぁ、レン!久しぶ…り……」
蓮にトムと呼ばれていた男が、ユウラを見るなり目を丸くして、拭いていたカップを落としてしまったのである。ユウラは瞬きひとつしない彼の視線を痛いくらいに感じながら、蓮に助けを求めた。
「さて!俺たちはやる事があるから、じゃあな!」