第2章 第一章『A Fateful Encounter』
「寂しくなるねぇ……」
女性が頬に手を当てて言った。これで六人目だ。ユウラは後頭部に手を当て、笑った。
ユウラはもう小さい頃から立派に大人に混じって働いている。人の家の畑仕事などをよく手伝っていたので、もうすっかり村人は家族のようなものである。よく畑の野菜を分けてくれたりと、とても彼女を可愛がってくれているのだ。
それは飽くまで大人は、という事であるが。
「あー!サエナギ!」
自分の苗字を叫ばれたので、ユウラはそちらを振り返った。ユウラよりも些か幼く見える少年三人組が、そこにはいた。
「お前村を追い出されたんだろ?」
「清々するよな!」
「早くどこにでも行っちまえ!化け物!」
「いや漬物!って言われても…」
「聞き間違いも甚だしいぞ」
風船ガムを膨らませ、三人組をものともしない様子であしらうユウラ。村の子供たちには昔からいじめられ、軽蔑されていたので、対処には慣れたものだ。
それからパスポートが取れるまで、ユウラは相変わらずの生活をしている。
いざ明日、旅立ちとなった日の昼間、ユウラはダンブルドアに会った森の中にいた。
「しばらく会えなくなるけど、元気でね」
「うん、でも、気をつけて」
「分かってるって。なんかね、わくわくしてるんだ。少し」
「話し相手がいなくなるのは寂しいな」
それは、ユウラと蛇の会話だった。
何故かユウラは昔から蛇のみと会話をする事が出来るのだ。
翌日を迎え、ユウラと蓮が村を出る日になった。
「いつ帰ってくるんだい?」
「一年後かな。またこの季節に帰ってくるよ」
「気をつけるんだよ」
「つらくなったら、いつでも帰っておいで」
村人の優しい見送りの言葉は目頭を熱くするものがあったが、ユウラは名残惜しくなってしまう前にさっさと行く事にした。
「うわー、すごい人だぁ」
空港でも飛行機でも逐一感動し、その度に蓮に怒られたが、それもはじめのうちだけで、ロンドンの空港にあと一時間で到着するという頃には、ユウラはすっかり眠りこけていた。
ユウラはまるで異世界に放り込まれたかのような表情だ。こういうのを目が点、というのだろう。