第2章 新生活
次の日、いつも通り改札で待ち構えていた影山くんに会った私は、どうしても目を合わせられなかった。
昨日自分が皆の前で言ってしまった言葉を思い出し、また恥ずかしくなる。
『私の初めては影山くん』
言葉というのは不思議なもので、そんなつもりで口にしたわけではなかったのに、なんだか影山くんと本当にそういう仲になったかのような錯覚を起こさせる。
昨日までは気にしていなかった影山くんの唇や手など、体の至るところに視線を向けることが憚られる。
朝から何考えてるんだろ、私…恥ずかしい。
菅原先輩とのこともあり、余計に思考がそっちの方向にシフトしてしまう。
そしてまた、余計に影山くんのことを見られなくなる。
ぼーっと歩いていたら、隣を歩いている影山くんに少しだけ体が接触してしまった。
「わっ……ご、ごごごごめん!」
思い切り飛び退く。
そしてそのままの距離を保って再び歩き出す。
そんな私を見て、影山くんが声をかけてきた。
「おい、お前今日何かおかしいぞ。」
「そ、そんなことないよ。普通だよ普通。」
私は影山くんの方を見ないまま答える。
「普通って言うならこっち向けよ。」
「いや、ちょっとそれは…」
「向かないなら無理矢理にでも向かせるぞ」
声色だけで黒いオーラが出ているのが分かったので、私は恐怖しながらも影山くんの方を向いた。
「もしかして、昨日のこと気にしてんのか。」
「!……はい、そうです。あの後自分の愚かさに気付いて恥ずかしくなりました、ごめんなさい。」
「気付くの遅ぇよ…本当に悪いと思ってんのかよ。」
「も、もちろん!」
「じゃあ、今日は体育館じゃなくてこれから別の場所に付き合えよ。」
「へ?」