第15章 月島くん。
「わー、全部食べてくれてありがとー!」
感動してそう言うけど、彼はそれには答えずにまた口を開く。
「明日、誰にもチョコ渡さないでよ。」
「え………」
「それが守れたら、明日またキスしてあげる。」
「…………!!!!」
ニヤリと笑ってそういう彼に、私はまた翻弄される。
けどそれと同時に、明日がたまらなく楽しみになってしまう自分がいた。
もう、だめだ。
もう私、この人から離れられない。
ぼーっと目の前の彼を見つめていたら、そんなことはお構い無しと言った感じで彼は、「じゃあ、そろそろ帰る。」と言って私に背中を向けようとする。
「あ、ちょっと待って……!」
「何。」
「あ………えーと…その…」
キスは明日までお預けだけど、帰る前に一度だけ抱きしめて欲しかった。
でも、恥ずかしくて言えない。
何でもない、と続けようとした、その時。
私の腕がゆっくりと引かれ、彼の腕の中にすっぽりと収められた。
背中に、彼の腕が回る。
「こうしてほしかったんでしょ。」
「うん………」
素直に頷いた。
大好き。
こうやって私の意図を見透かして、たまに優しくしてくれるのがたまらない。
体が離れて、いよいよ本当にさよならという時。
去り際に、彼はまた私に爆弾を落としていった。
「前に言ってたとおりさ。毎日たくさんいじめてあげるから。楽しみにしててね、彼女さん。」
明日からの刺激的な毎日を思うと私は胸のドキドキがおさまらず、長く長く息を吐くのだった。