第2章 新生活
「お、及川さん!」
「このまま飛雄ちゃんのものになるなんてもったいないよ。俺と…」
か、影山くんのもの??
両手を包み込まれたところで、及川さんを呼ぶ声が響いた。
「及川、お前こんなところで他校のマネージャーくどいてんじゃねえ!!!」
「げ、い、岩ちゃん…」
「戻るぞ。」
「痛い!痛いよ岩ちゃん!」
「うるせー!」
岩ちゃんと呼ばれたその人に、及川さんは耳を引っ張られてずるずると引きずられていく。
それでも最後に私への一言を忘れなかった。
「また会おうね。今度の時は俺が一番って言わせてみせるから。」
それだけ言うと、また引きずっている人に頭を殴られていた。
そのまま体育館へと消えていく。
何だか……かっこいいのか面白いのか、よくわからない人だった。
ぼーっとしている私を見て、大丈夫か、と影山くんが聞いてくれる。
「あ、ごめんね。なんかよくわかんないけど、私のせいで色々混乱が…」
「まったくだ!お前はもう少し考えてから発言しろ!」
私が悪いから仕方ないのだけど、また怒られてしまった。
影山くんは怒鳴ったあと、ひとつ深呼吸をしてから言葉を続けた。
「でも……サーブのことは、サンキューな。」
「あ、うん!」
それだけ言って、先にバスへと乗り込む影山くん。
それを見て私は、影山くんは本当に照れ屋だなあと微笑ましく思う。
こうして初めての練習試合は終わりを告げ、バスは烏野高校を目指し、私達を運ぶのだった。