第2章 新生活
私達が騒いでいると先程話題にのぼっていた影山くんの中学時代の先輩が手をひらひら振りながらこちらにやってきた。
「久しぶり〜飛雄ちゃん。」
「及川さん…」
「しばらく会わないうちに飛雄ちゃんも大人の男になったんだねえ。」
「ま、まさか今の話聞いて…」
「うん、聞いてた。」
にこりと笑う及川さんの答えを聞いて、影山くんは天を仰ぐ。
「しかもこんな可愛い子と。ほんとに…」
及川さんは一旦言葉を切って、表情を一変させた。
冷たい視線で影山くんを射抜いて言う。
「生意気。」
場の空気が凍る中、その事態を打開してくれたのは菅原先輩だった。
「な、なあ。ちょっと落ち着こう皆。さっきから影山も誤解だって言ってるんだしさ。」
そうなんだろ?と、菅原先輩が影山くんに確認する。
それに対して影山くんは静かに頷いた。
「さっきのはジャンプサーブの話です。こいつが生で初めて見たのが俺のジャンプサーブだったから、その……い、一番だって…」
それを聞いた皆は一斉に肩の力が抜けたようにうなだれた。
「飛雄ちゃんのサーブが一番?君、さっきの俺のサーブ本当にちゃんと見てた?」
及川さんが体を前に倒して私の顔を覗き込んでくる。
う…近い。
「み、見てましたけど…」
「ふーん…気に入らないなあ。」
そう言って及川さんは私から離れる。
ほっとしていると、今度はにこりと笑いかけられた。
「今の発言は理解できないけど、俺、君のこと気に入っちゃった。」