第15章 月島くん。
私の家まで二人で戻って来る頃には、さっきまでの雨は嘘のようにやんでいた。
家の前で別れの挨拶をしようとしたとき、ふいに彼が口を開く。
「そういえばさ、何で菜月はうちの最寄り駅なんて来てたの?」
その言葉に、私は当初の目的をすっかり失念していたことに気付く。
「あああああー!!!!」
「な、何?大きな声出さないでよ………」
「ごめん。包装するもの買いに行ったのに結局忘れて帰ってきちゃった………」
「何それ…バカじゃないの。」
ああ。また呆れられてしまった。
そう思ってしょげていると、彼は続けて言う。
「でもまあ、これで他のやつらにチョコが行き渡らないんだとしたら、それはそれでいいけどね。」
「え……」
「もうチョコ、できてるんでしょ?僕の分だけ今、持ってきなよ。」
「あ……うん!!」
どうせ包装も出来ないし、それなら今渡してしまった方がいい。
ほんの少しだけ、バレンタインには早いけど。
私は家に戻って、彼宛てのチョコだけ持って、すぐに彼のところへと取って返す。
そして紙皿に乗せたそれを、彼に向けて差し出した。