第15章 月島くん。
その言葉に反応できないうちに、月島くんは、行くよ、と言って私を傘に入れながら駅の方へと誘導する。
「あ、待って月島く……」
「あれ?」
私の言葉に、月島くんが足を止めて振り返った。
「名前。さっき名前で呼んでたじゃん。」
「あ、えーと、ごめん…。あれはお兄さんとの区別で…」
最後の方、言葉を濁していると彼は私の言葉にかぶせるようにして言う。
「いいから。」
「え?」
「もう名前で呼べば。彼女になったんでしょ。」
それだけ言うと、また彼は歩き始める。
「………家まで送ってくから。」
そう、ぼそりと呟く彼に、私は満面の笑みで頷いた。