第2章 新生活
初めての練習試合当日。
楽しみなことは楽しみなのだけれど、昨日感じた不安を胸に抱えたまま、私は皆と一緒にバスに乗り込んだ。
日向くんは完全に緊張していて、このままで試合大丈夫なのかなとこちらも不安になる程だった。
なんか意外。
練習試合楽しみで眠れないとか、そういう緊張知らずなタイプだと思っていた。
そんなことを思う自分も、バスに乗り込む前から緊張していた。
自分が試合に出るわけでもないのに、やはり初めての練習試合で他校へ行くというのは新鮮なことだ。
音楽でも聴いて落ち着こう…
バッグから音楽プレーヤーを出して、再生する。
すると、一曲目に菅原先輩からもらったCDの曲が流れてきた。
シャッフル再生にしていたので、何が流れるのかわからなかったのだ。
「うわっ…」
動揺して他の曲に変えようとしたところで、私の隣の席に腰を下ろした人がいた。
そして気付けば次に、片方のイヤホンを引きぬかれていた。
引きぬかれたイヤホンは菅原先輩の耳へ。
「……うん、俺があげたの聴いてるね。えらいえらい!」
そう言って笑顔でイヤホンを返してくる。
自然に私の隣に座ってきたことにも、何を聴いているのか確認してきたことにも、両方驚いた。
「菜月緊張してるだろ?」
「え、あ…はい。」
「大丈夫だよ。すぐ慣れるって。今日は試合中、俺も隣にいるから。」
そう、今日の試合は影山くんがスタートのメンバーだ。
コーチが決めたのではなく、相手の学校側が練習試合の条件としてそう指定してきたらしい。
菅原先輩に何と返したらいいのかわからなくて、控えめに頷いた。