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【HQ】春が始まる。(烏野逆ハー)

第15章 月島くん。




遠くなる後ろ姿を見て焦る自分に気付いた私は、気が付いたら走りだしていた。



濡れることも厭わずに。



今、このまま彼を見送ってしまったら、もう元の関係には戻れないかもしれない。



そんな言いようのない不安が私の心を一瞬で支配した。



少し走っただけで靴に雨水が染みこんできてしまう。
嫌な冷たさが足を覆った。



でも、急いだおかげで何とか彼に追いつくことができた。
必死で彼の名前を呼ぶ。



「月島くん……!!」



私の声に振り返った月島くんは、私が傘をさしていないことに気付くと、すぐに自分の傘にいれてくれた。



「ちょっと………何やってんの。」



「月島くん、何か勘違いしたみたいだったから……」



「………勘違いなんかしてない。ほら、兄貴に送ってもらって早く帰りなよ。僕も、もうさっさと帰りたい。」



その言葉に、私への拒絶を感じて思わず泣きそうになる。



勘違いしないで。



嫌だ。



今まで積み上げてきた彼の私に対する信頼が、音を立てて崩れていくような気がしていた。



あんなに笑顔が見たいと思っていたのに、今、私は彼に正反対の表情をさせている。



もう二度と私には笑顔を向けてくれないような気がして、胸が苦しくなった。


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