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【HQ】春が始まる。(烏野逆ハー)

第15章 月島くん。




それは隣のお兄さんも同じなようだった。



「げ。俺、傘持ってないや。うち近いけど、これは濡れるだろうなあ……。仕方ないからそこで買っていくかー。」



二人で顔を見合わせて苦笑し合い、じゃあまた、と別れの挨拶をしようとした時だった。



私達の前に傘をさした長身の人物が立つ。
傘を前に倒していて、顔は見えなかった。



その人物が、ゆっくりと傘を上げ、顔を見せる。



「蛍!迎えに来てくれたのか?」



「……母さんに頼まれたから。これ。」



「ああ、サンキュー。」



「突然帰ってくるなんて言うと思ったら、こういうことだったわけ。」



「は?」



月島くんはお兄さんに傘を差し出すと、私を無言で一瞥し、そのまま踵を返して行ってしまう。



それを見たお兄さんが、困ったような声を出した。



「あちゃー………あいつ、何か勘違いしたな……。」



「え?」



「水沢さんと俺が密会してたとでも思ったんじゃないかな。」



ぐんぐん遠ざかって行くその後ろ姿。



その背中からは、同じ場所に帰るお兄さんですら寄せ付けないという感じのオーラが漂っていた。



どうしよう。



誤解、とかなきゃ。



私、お兄さんとはそんなんじゃないよ。


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