第14章 大地さん。
体育館の裏まで一緒に来てもらったところで、私は大地さんに向き直った。
彼は、多分こわばっているんだろう私の顔を見て不思議そうな顔をしている。
「何、どうした?何か悩み相談?なんでも聞くから言ってみなさい!」
大地さんの言葉に、私は体の力が一気に抜けてしまう。
やっぱり、大地さんは大地さんだ。
自分が呼ばれるときは、助けを求められているときだと思っているんだろう。
でも、私は…………
「東京に行っちゃうんですね。」
「あ、聞いた?そうなんだよ。春から一人暮らし!うまくいくかちょっと不安ではあるけど……まあ、なんとかやるよ。」
「………………」
「菜月?」
「今更って思うかもしれないけど……聞いてもらってもいいですか。」
「ああ、もちろん。」
私の言葉に、大地さんは笑顔で答えてくれる。
それを見たら、用意していた言葉がどこかへ吹き飛んでいってしまって涙が溢れてきた。
でも、この安心が手の届かないものになる前に、自分の想いだけは伝えたかった。