第2章 新生活
思わず驚きで、月島くんの後ろから飛び出てしまった。
「あれ、君はこの間の…」
「す、すみませんでした!コーチとは知らず失礼なことを…」
烏養さんにぺこぺこと頭を下げる。
知らなかったとはいえ、コーチと最悪の初対面になってしまった。
「まあ、気にするな。こんななりして学校に入った俺にも否はあるしな。」
見た目に反して意外と話のわかる人のようだ。
何はともあれ、正体が分かって安心する。
「私、1年でマネージャーの水沢菜月です。よろしくお願いします!」
「…1年の月島蛍です。よろしくお願いします。」
「ああ。他のやつも来始めてるみたいだし、俺は一足先に体育館に入ってるわ。また後でな。」
そう言って烏養さんは体育館へ入っていった。
その直後、月島くんと二人で顔を見合わせる。
そして笑ってしまった。
「ちょっと、全然不審人物じゃないじゃん。コーチだよ、よりによって。影山どうすんだろうね。」
「あ……ま、まあ、もし何かあったら私が説明するし!」
月島くんはそう言った私の顔を無表情で見つめてくる。
「な…なに?」
「前から思ってたんだけどさ、菜月って影山に甘いよね。」
「え!そ、そうかなあ…?」
心なしか、目の前の月島くんはまた不機嫌になったような気がする。
「あー不愉快…」
月島くんがぼそっとつぶやいた言葉は私の耳には届かなくて。
聞き返したけれど、月島くんは教えてくれないまま、先に部室へと入っていってしまった。