第12章 影山くん。
先輩の言葉は正しかった。
影山くんがこのままバレー人生を順調に進んでいけば行くほど、私との物理的な距離はどんどん開いていくだろう。
東京が、名古屋や大阪や九州になって。
果てには世界へ。
ただの高校生の私にはとてもじゃないけど、付いて行くなんて言えないだろう。
自分が大人でないことがこんなにも悔しいなんて。
影山くんが自分の夢に向かって頑張っているときに、私はただ寂しいと叫ぶことしかできないなんて。
自分が情けなくて恥ずかしくて、大嫌いになりそうだった。
それでも。
私にはあの人なんだ。
どうしようもなく、心が求める存在。
どれだけ影山くんと自分との間に「天才」と「凡人」の隔たりがあろうと。
どれだけ周りに反対されたとしても、私は彼のことを諦めることはできないだろう。
私が黙っているのを見て、先輩は困ったように笑った。
「やっぱり、影山じゃなきゃだめか。」
「………。」
「バレーでもかなわなくて、好きな子も取られて。影山には負けっぱなしだったな、俺。」
かっこ悪い。
そう言う先輩に、私は何も言葉をかけられなかった。