第12章 影山くん。
「影山と、付き合うことにしたんだってな。」
窓から外を眺めて先輩は言う。
「はい…。そのこと、お話したくて今先輩を探してました。」
「そっか。俺も最後に話したいことがあって来た。」
菅原先輩の真剣な表情に、私も居住まいを正した。
「菜月。俺はさ…影山みたいに何か特別な才能があるわけでもないし、皆に尊敬されたり驚かれたりするような偉業を成し遂げたりも、きっとできない。…けどさ。」
一度俯いた先輩が、再び顔を上げる。
「俺なら菜月を守ることだけに人生の意味を見いだせるよ。ずっと側にだっていられる。それでも…俺じゃだめかな。」
「菅原先輩……」
「影山と付き合うことになったって聞いてからも俺、菜月のことずっと見てた。俺さ、見てられないよ。影山のことを待って辛そうな、寂しそうな菜月のこと。」
「………。」
「影山と付き合っていく限り、この状態はずっと続く。こんなこと言うのは卑怯かもしれないけど、菜月は辛い思いをすると思う。」