第12章 影山くん。
私達の関係が、彼氏彼女という肩書に変わっても、忙しい影山くんの毎日は変わらなかった。
東京に行くことが増え、部活に参加する日も少なくなり、会える時間は必然的に少なくなっていた。
影山くんのことが好きだと自覚してからというもの、心には常に寂しさがつきまとい、私を苦しめた。
どんなに会いたくても、触れたくても、距離には敵わない。
そんな日々が続き、とうとうカレンダーは3月に突入した。
今日は3年生の卒業式だ。
式を終えた3年生たちが校門のところで最後の別れを惜しむ様子を、私は一人教室の窓から眺めていた。
私は卒業生の中に、菅原先輩の姿を探す。
きちんと、菅原先輩に話をしてから送り出そうと決めていた。
「菜月。」
いきなり声をかけられて驚いた。
声のした方に振り返れば、今私が探していた人物が教室の出入り口に立っていた。
「菅原先輩…」
「ちょっといいか?」
そう言って笑う先輩は、少し切なそうな表情をしていた。