第12章 影山くん。
影山くんは、なんで私に一言も話してくれなかったんだろう。
別に彼女でもないのだから、私に話す義務はない。
それでも、私はそこが引っかかっていた。
私と影山くんの距離ってそんなものだったのかな…
電車に揺られながら、そんなことを考えて切なくなった。
私が勝手にしたことだから影山くんが気にしてもいけないし、連絡はしなかった。
駅でベンチに腰掛け、ただただホームに入ってくる新幹線を見つめ続ける。
乗客が降りてくる時だけ、神経をとがらせて辺りを見回した。
なかなか彼の姿を見つけられないまま時計の針はもう21時を回っていた。
さすがに22時になったら帰ろうかな。
そう思っていたところで、次に滑りこんできた新幹線から、私の今一番会いたかった人が出てくるのが見えた。
「影山くん!!!」
私の声に気付き、顔を上げた彼は次の瞬間、驚いた表情をした。
「菜月…?!」
「影山くんだ、影山くんだー…」
泣きそうになっている私のもとに、影山くんは駆け寄ってきてくれた。
「お前なんでこんな時間にこんな所にいるんだよボケ!!」