第2章 新生活
部室の棚の上。
特別高い場所に目的のものはあった。
武田先生に、今日の午後の練習からコーチが来ることになったから今までの対戦成績などの資料を出しておいてほしいと頼まれたのだ。
ダンボールに入ったそれは、背伸びしても届きそうもなかった。
けれどジャンプすると、かろうじて手が触れた。
よし、このままずらして落とそう。
乱暴なことを考えながら、何度もジャンプした。
ダンボールは徐々にその位置をずらし、とうとうこちらに傾いた。
よし、落ちてくる……と、思った瞬間、想像より重量のあったらしいダンボールは私の顔面めがけてすごいスピードで迫ってくる。
思わず頭をかばって目を瞑る。
でも、いつまでたってもダンボールは落ちてこなかった。
おそるおそる目を開けると、落ちてきたダンボールを見事にキャッチし、ついでによろけた私の体を支えてくれた人がいた。
「君ってさ……。無駄にやる気があるくせに、どうしてこういうところで労力削ろうとするのさ。何かしら踏み台にすれば済む話でしょ。」
ほんと、理解不能。呆れた様子を見せながらそう言って、ダンボールから私を守ってくれたのは月島くんだった。
「あ、ありがとう月島くん」
「ほんとに一人のとき何やってるかわかんないんだから…君って目が離せないよね。危なっかしくてさ。」
月島くんは、ダンボールを持ったまま更に続ける。
「で、これ。どこに持っていくわけ?」
「え、あ、職員室だけど…大丈夫だよ。私の仕事だし自分でできるから。」
「ふーん…。」
私がやんわり断ると、月島くんは意地悪そうな笑みを浮かべた。
「じゃあ、はい。頑張って。」
そう言って私にダンボールを手渡す。
その瞬間にずしりと腕に重みが加わった。
う、ほんとに重い…
私の表情を確認したあと、月島くんは私からダンボールを奪った。
「まったく…できないんだったらできないで最初から言いなって。」
そう言って部室を出て行こうとする。
それを見て私は慌てて両手がふさがった月島くんのかわりに部室の扉を開ける。
そして、彼が出たあとに自分も外に出て扉を閉めた。