第11章 菅原先輩。
もうほとんど生徒は帰っていて、人が通りにくいであろうこの廊下だけど、もし誰か来たら恥ずかしいな。
そう思ったけど、先輩はまだまだ離してくれそうもなかった。
先輩の気の済むまで抱きしめられたあと、体が離れたところで私は口を開いた。
「あの、菅原先輩…。ごめんなさい。私…今日バレンタインなのにチョコ持ってなくて。」
昨日の夜、一応手作りチョコに挑戦したのだけど、もやもやした気持ちを抱えた状態で作ったそれは盛大に失敗し、多めに用意していた材料をすべて使い果たしてしまったのだった。
それにどうせあげるなら、きちんと自分の気持ちが分かった今、作ってプレゼントしたい。
そのことを伝えると、菅原先輩は私の大好きな笑顔で笑ってくれた。
「別にいいよ。今日持ってなくたってさ。それより…」
先輩は私の顎に手をかけて、親指で私の唇をなぞる。
「俺は今、こっちがほしい。」