第11章 菅原先輩。
「あ、でもさっき帰るのは見かけたよ。何か用だった?」
「えっ…」
菅原先輩の言葉に、私はもしかしたら清水先輩にハメられたのかもしれないという気になってくる。
でも、今はそんなことは関係なかった。
本当に待たせて遅くなってしまったけど、さっき気付いた自分の本当の気持ち。
待たせすぎてしまったし、この約一月の間はほとんど話もしていない状態だったから、もう先輩の気持ちは変わってしまっているかもしれないけど。
それでも私は伝えたかった。
「菅原先輩、私…先輩のことが、好きです。」
「えっ…」
「もう待たせすぎて私のことなんてどうでも良くなっちゃったかもしれないですけど、でも私…」
初めて会った日から、ずっと菅原先輩の笑顔が好きだった。
人の心の機微に敏感で、誰よりも優しく、思慮深い先輩。
その人柄に憧れていたけど、私はそれは恋とは異なるものだと思っていた。
でも、その優しさも笑顔も、全部私にだけ向けてほしいと思ってしまったから。
そういう自分の気持ちに気付いてしまったから。
もう一度好きですと言おうとしたところで、先輩の腕にそれを阻まれた。