第11章 菅原先輩。
清水先輩がその綺麗な顔を一旦俯け、そしてまた顔を上げて続ける。
「私、菅原に告白する。」
「え…?」
「一年の頃からずっと一緒にやってきて、菅原のこと見てきた。私、菅原のことが好きなんだ。」
あまり自分の感情を表に出さない清水先輩だから、菅原先輩のことをそんなふうに思っているだなんて思いもしなかった。
私は驚きのあまり、言葉も出ない。
「このまま会えなくなるなんて嫌だから…。バレンタインの日、告白するつもり。ごめんね、何も言わずに告白するのは何だか卑怯かなと思ったから、話しておきたかったの。」
「い、いえ。そんな、私は…。」
私は、何だ。
一体今何を続けて言うつもりだったんだろう。
はっきりしない自分自身に腹が立つ。
「私の話はそれだけだから。ありがとう。」
そう言って清水先輩は行ってしまった。
取り残された私は、しばらく呆然として、その場を動けなかった。
清水先輩が菅原先輩のことを好き、か…。
言われてみれば、部活中に二人が隣同士にいることは結構多かったような気もする。
あれは清水先輩が意図的にしていたことなんだろうか。
二人は3年間ずっと一緒にやってきた仲なので絆があるだろう。
それに、清水先輩は誰もが認める美人だ。
いざ告白されたら、菅原先輩も本気になるかもしれない。
心がざわついていた。
それはその時だけのものではなく、その後も長きに渡って私を苦しめることになる。