第11章 菅原先輩。
そんなある日、校内で偶然すれ違った清水先輩に呼び止められた。
「菜月ちゃん、ちょっと話したいことがあるんだけど、いいかな。」
「はい。」
久しぶりに話す清水先輩は、やっぱり綺麗だった。
清水先輩も菅原先輩と同様、早々にその進路を決めていたので後は卒業を待つばかりだ。
涼やかなその目元を優しくほころばせて、清水先輩は口を開く。
「ごめんね、急に。」
「あ、いえ。どうしたんですか?」
「あのね…菅原のことなんだけど。」
「え?」
菅原先輩?
清水先輩が?一体なんの話だろう…
「菜月ちゃん、菅原のこと結局どうすることにしたの?」
「え、ええと…」
菅原先輩は部内での私への態度があからさまだったため、もちろん清水先輩も菅原先輩の気持ちを知っている。
そして、それに対して私がまだ応えられていないということも。
「やっぱりまだ、決めあぐねているんだ。」
「はい…」
「あのね、もちろん知ってると思うけど、菅原は本当にいいやつだよ。なかなかあんな人、探しても見つからないと思う。」
「はい、それは本当にそう思います…」
「菜月ちゃんがもし、はっきり菅原のことが好きだって思えないようなら…」