第10章 「春」
「これはこれは、じゃんけんで勝ってガッツポーズキメてた影山くんじゃないですか。早速抜け駆けですかコラ。」
「た、田中さん…!!」
日向くんの後ろから続々と皆が集まってくるのが見えた。
田中先輩の言葉に、私は思わず反応してしまう。
「じゃんけん……?」
私の呟きに気付いた大地さんが説明してくれる。
「菜月の家に男が大勢で押しかけるのもあれかなって話になってさ。じゃんけんで代表を決めたわけ。」
「ああ、それで影山くん一人だったんですね。」
「影山、勝ったとき本当に嬉しそうだったよ。」
旭さんにそう言われて、私は恥ずかしくなって俯いた。
「あれほど抜け駆けは無しって言ったよなー影山この野郎ー!!」
影山くんは田中先輩と西谷先輩のコンビに詰め寄られている。
そんな三人の様子を見て、大地さんは部活の時のように手を叩いて声を出した。
「おいお前らそこまで!年越しもゆっくりさせてくれないわけ?そんなことしてる間に新年になるぞ。」