第10章 「春」
影山くんが小さく呟いたところで、皆がもう到着しているであろう神社に着いた。
そこは既にたくさんの初詣に来た人達で賑わっていた。
みんな、新年が来るのを心待ちにしている様子だ。
今年ももう、残すところ10分弱。
私のかけがえのない1年になった年が、終わろうとしている。
腕時計で時間を確認して顔を上げた時だった。
「か、影山お前何してるー!!!」
人混みの中から突如として現れた日向くんが、私と影山くんの様子を見て大声をあげた。
最初、何の事を言っているのか分からなかったけど、日向くんの視線が私達の繋がれている手に注がれていることに気付き、ハッとした。
影山くんも気付いたらしく、慌てて私の右手から手を離した。
彼のポケットから出て、久しぶりに外気に触れた右手は、影山くんの優しさでポカポカに温まっていた。