第10章 「春」
「でも、やっばり……一番はお前なんだよ。」
「え?」
「一番俺を変えたのは菜月、お前だ。」
影山くんの真っ直ぐな視線が私を捉えて離さない。
「お前に会えて、本当に良かったと思ってる。だから……」
だから………?
「これからも、側にいろよ。」
優しい表情で、影山くんは私に告げる。
ずるいよ。
なんでそんなこと、そんな表情で言うの。
「わ、私も……影山くんに会えて良かったと思ってるよ。」
私が慌ててそう言うと、影山くんは途端にしかめっ面になる。
「お前それ、他のやつらにも同じこと思ってるし言うつもりだろ。」
「え、ええと……」
「分かりやすいんだよお前は!」
そう言って、空いている方の手で頭を軽く小突かれた。
そうした影山くんも、された私もお互いの顔を見て笑ってしまう。
「でも、本当にそう思ってるんだからね?今年は本当にお世話になりました。来年もよろしくね。」
「………ああ。」