第2章 新生活
影山くんを促して二人で歩き始める。
影山くんは膨れたままの私のセカンドバッグを見て口を開く。
「もしかしてこのバッグの中身ってみんなクッキーなのか…?!」
「あ、そうそう。日向くんとかたくさん食べるかなって。あと、他の部員の人たちにも。」
影山くんの表情がみるみる曇る。
「日向にやるくらいなら…」
「え?」
「日向にやるくらいなら今ここで俺が全部食ってやる!貸せ!」
「ええー!!?」
本気モードの影山くんを前に、私は咄嗟に逃げ出してしまう。
でも、走力で敵うはずもなく、私はあっけなく影山くんに捕まる。
手を掴まれて引き寄せられた。
一気に影山くんが近付く。
見上げれば影山くんの顔がすぐ近くにあって、私は弾かれたように下を向いた。
何か、恥ずかしい…
私は繋がれたままの手に、視線を落とした。
いつもの影山くんならすぐに離れるはずなのに。
「他のやつにもやるなんて、言うなよ…」
切なそうな声色。
頭上から降ってきたその言葉は、私を驚かせた。
「か、影山く…//」
何だか息がしづらい。
呼吸困難になりそうだ。
酸素が恋しくて離してほしいけど、意外に影山くんの手の感触が気持ちよくて、このままでいたいというような気持ちにさせる。
何考えてるんだろ、私…
私の様子に気付いたのか、影山くんがはっとして私の手を離し、距離をとる。