第2章 新生活
そんなある日のこと、私は大きめのセカンドバッグを肩にかけ、いつものように改札を抜けた。
待ってくれていた影山くんがそれに気付く。
「今日、何か荷物多いな。」
「あ、これね。見た目の割に中身軽いし大丈夫だよ。…はいこれ。」
私はセカンドバッグの中からひとつの包みを取り出して影山くんに渡す。
「約束したのに遅くなっちゃってごめんね。」
私が影山くんに渡したのは以前約束していたクッキーだった。
あれから作ろうと思うことは何度もあったのだけど、新生活の疲れからなかなかそういう気になれない日も多く、延ばし延ばしになってしまっていた。
料理は気持ちが入らないと失敗する気がするから、心をこめて作れるタイミングを待っていたのだ。
影山くんは驚いた様子でそれを受け取り、しばらく包みを見つめていた。
そして顔を上げてお礼を言ってくれる。
「さっ…サンキューな。」
「ううん。私の方こそ、いつもありがとうね、影山くん。」
「…何の事だよ。」
「色々だよ色々!ほら行こう。」