第10章 「春」
「あ、あれ?影山くん……?」
「よお。」
彼のところまで駆け寄って、軽く挨拶を交わす。
「皆で来るって聞いてたけど…どうして一人なの?」
「ああ?!俺一人じゃ悪いか!!」
「べ、別にそんなこと一言も言ってないじゃんー……!夜遅いんだから声のボリューム気をつけてよー!」
私の言葉で今が深夜だったことに気付いた、とでも言うように影山くんはハッとした。
そして、ばつが悪そうに私から視線を外す。
「悪い……。」
「皆は先に行ってる感じ?」
「ああ、そうだ。」
「ふーん、そうなんだ…?」
何故急に迎えの件が変更になったのか分からないままだったけど、影山くんはこれ以上説明してくれることは無さそうだったので、諦めることにする。
どちらにせよ、ここまで来てもらったのはありがたい。
「お迎え来させちゃってごめんね。ありがとう影山くん。」
「ああ。ほら、行くぞ。」