第10章 「春」
そう言う私の顔をぼーっと見つめたあと、先輩はいつもの笑顔を見せてくれた。
「……ほんと菜月のそういう飾らないとこ、好き。」
「え!!」
「いや、普通……こういうふうに言ったら何だけど、女の子ならもっと良いとこ行きたがるもんかなって思って。」
「そ、そうですかね……」
クリスマスだからだろうか。
先輩の直球に、ますます磨きがかかっている。
その一つ一つに、いちいち反応してしまう私も私なんだろうけど。
「ほら!じゃあ高いとこ食べに行ったと思って、ここでその分、量食べよう!」
「わーい!!」
やっぱり、せっかくのクリスマスのごちそうもケーキも、一人で食べたんじゃつまらない。
先輩が誘ってくれて良かったな。
コンビニの商品の中から、先輩とクリスマスっぽい食べ物を仲良く探してレジを通し、席で頂いた。
やっぱり私は、高価なものとか、皆が羨むようなところとか、そういうことにはあまり興味がない。
大切なのは、誰といるか、何をするかだ。
そんな風に、高校で初めてのクリスマスを迎えた私は思う。