第10章 「春」
「どうした?」
私の視線を追った先輩も、あの二人を見つけたらしい。
あー、と声を出して苦笑している。
「クリスマスだからなあ。こういうこともあるよな。」
「そうですね……」
俯いたまま、返事をする。
「………俺達も、してみる?」
「ええ?!!」
先輩の口から飛び出た衝撃の発言に、私は驚いて即座に顔を上げた。
私の顔を見た先輩は、こらえきれないと言った風に笑い出す。
「悪い悪い、調子乗った。」
「もう………」
「でもさ。来年のクリスマスは、お前とそういう事できる関係でいたいな。」
先輩は優しい瞳をこちらに向けて言う。
そして次に、少しだけ屈んで私に耳打ちをしてきた。
「ここのイルミネーションも綺麗だけどさ、来年はもっとすごいの俺と見に行こうな。」
そう言って、きらきら光るイルミネーションの中で笑う先輩から、私は目が離せなくなってしまった。
クリスマスというシチュエーションも相まって、ドキドキが増していく。
来年のクリスマス、私はどうしているだろう。
もっと言えば、3年後、5年後は何をしているのかな。
常に先のことを示してくれる先輩の隣で私は、夢のようなイルミネーションに囲まれ、呆然としながら考えるのだった。