第10章 「春」
駅に近付けば近付くほど、周りはカップルで溢れていって、何ともクリスマスらしい雰囲気を帯びてくる。
電車に乗って、数駅移動したあと少し歩いた先に、先輩の目的地はあった。
「うわあーっ!!綺麗ー!!」
そこは、期間限定のクリスマスイルミネーションが施されているカップルに人気のスポットだった。
友人が彼氏に連れて行ってもらうと言っていたから、何となく覚えていたのだ。
「な、クリスマスっぽいだろ?」
「はい!!」
思いがけず、クリスマスっぽいことができたのでとても興奮してしまう。
色とりどりに光るイルミネーションをぼーっと眺めたあと、ふいに辺りに視線を移す。
その時、とんでもない光景が私の目に飛び込んできた。
当然、こんなスポットだから周りはカップルだらけなのだけど、その中でもひときわ目立つ美男美女が熱烈なキスを交わしていた。
何だか覗き見してしまったような気持ちになって、私はすぐにその二人から視線を逸らした。
見てる方が恥ずかしい。