第9章 代表決定戦
大地さんは幸い脳震盪は起こしておらず、大事には至らなかった。
ただ、歯も抜けてしまうほどの強い衝撃による出血と痛みの方が深刻だった。
烏養さんは先ほどの言葉通り、大地さんの無事を確認してからすぐに体育館へと戻っていった。
医務室には、私達二人だけが残される。
長椅子に腰掛けたまま、リノリウムの床の一点を険しい表情で見つめ続ける大地さんに、私は声をかけた。
「あの。体、休めましょう?寝てたほうがいいです。」
私の言葉に顔を上げた大地さんは、無理やり作った笑顔をこちらに向けて言う。
「ああ……大丈夫。すぐに戻るから、寝てなんていられない。」
そう言って、すっと立ち上がった大地さんは次の瞬間、動揺からか軽くふらついた。
私は慌てて、その体を支える。
「……分かりました。じゃあ寝なくてもいいから、せめて座っててください。」
「…………」
彼の両腕にかけた手に軽く力を入れて座るように促す。
抵抗なく、大地さんは再び腰を下ろしてくれた。
けれど今度は頭を抱えて黙りこんでしまう。
それを見て、胸が痛んだ。
安っぽい慰めの言葉は、きっと意味をなさない。
それなら、どうしたらいい?
私なら、どうしてほしいだろう。