第9章 代表決定戦
「水沢!」
「はい!!」
烏養さんに名前を呼ばれて、咄嗟に大声で返事をする。
「もし脳震盪起こしてたらやべえからな。今から医務室行くから一緒に来い。
俺は容体だけ確認したらすぐこっちに戻るから、お前は澤村についててくれ。」
「……分かりました!」
悔しさに顔を歪める大地さんの隣に立ち、もしふらついた時にでもすぐ支えられるようにと、意識を彼の方に向ける。
悔しくないわけない。
早く戻りたいに違いない。
こんなこと、本当なら考えたくないけど、この試合で負けてしまったら。
これが、この瞬間が、大地さんの高校バレーの幕引きになってしまうのだ。
そんなのってない。
辛すぎる。
みんな、どうか頑張って…………
そう思い、体育館から出る間際、コートの方を振り返る。
試合はまだ再開しておらず、コート内のみんなはこちらを心配そうに窺っていた。
その一人ひとりの目が、振り返った私を捉えた時、力強い輝きを放った。
「大地さんを頼むぞ菜月ー!!」
西谷先輩が何度もジャンプしながら叫ぶ。
「…………はい!!」
勝って、大地さんに必ず次の舞台を用意する。
だから大丈夫だ。
そう言われた気がして、私の心から不安が、すっと消えていく。
そうだよ、皆ならきっと大丈夫。
みんなの視線から、そんな強いメッセージを受け取ったあと、私達は体育館を後にした。