第2章 新生活
それを確認したあと、影山くんが黒いオーラを充満させたまま、ぐるりとこちらを振り返る。
「あんな危なそうなやつ、まともに相手してんじゃねえよ!」
「ご、ごめんなさい…!私も今どうやって戦おうか考えてたんだけど…」
「戦うって…お前なんか武道とかやってんのか。」
「いや、特には…。」
余計怒らせちゃったかな…。
拳を握りしめて震えている影山くんを恐る恐る覗きこむ。
「戦うすべがねえなら、さっさと逃げるか助け求めるかしろよバカ!なんかあったらどうすんだよ!!」
吹き飛ばされそうなくらいの威圧感と怒声で叱られてしまった。
でも、何だか嬉しい。
「へへ…」
「何へらへらしてんだよ。俺の言ってることわかってんのか?!」
「本気で心配してくれてありがとう、影山くん」
「なっ……」
人のために怒るってエネルギーがいることだ。
それに、影山くんだって出来れば怖そうな人とは関わりたくないはず。
見てみぬふりだって出来たはずなのに、助けてくれた。
「菜月に何かあったら…」
「ん?」
影山くんがぼそぼそと何事か話しだす。
「菜月に何かあったら俺の朝の練習には誰が付き合うんだよ!…ただ、それだけだからな!」
そう叫んでから、いつもの声のトーンで行くぞ、と呟いた影山くんは踵を返してぐんぐん歩いて行く。
「お前、今朝俺との練習サボったんだから明日覚悟しとけよ。倒れるくらいこき使ってやる。」
「えええー!」
私は置いていかれないように、小走りで影山くんを追いかけた。
こき使うと宣言されてしまったけど、今日は悪いことをしてしまったしそれでもいいかな、なんて考えながら。