第8章 春への道
“水沢さんのこと本当に好きみたいだから”
つい、さっきのお兄さんの言葉がフィードバックして、それも相まって私の頬は一気に熱くなる。
月島くんから視線を外して俯くと、すぐに隣から月島くんの静かな声が追いかけてきた。
「そらさないで、ちゃんとこっち見なよ。」
「え、ええと……」
足元だけを見て歩いていたけれど、突然月島くんが私の手首を取ったので、それに伴い足が止まる。
顔を上げた先には、月島くんのまっすぐな視線があった。
「王様や菅原さんのとこになんて、行かせないから。」
「え………」
「最近、何もしてこないと思って油断してたでしょ。」
「そ、そんなことは……」
あるかも。
夏合宿の前にキスされた時は少しの間、彼の前でおかしな行動をしていたけど、それも時間の経過と共に落ち着いていった。
「あのさ。菜月にこういうことしたいって思ってるのは、何も王様や菅原さんだけじゃないんだよ。」
そう言って月島くんは私の顎を軽く持ち上げる。
そして、彼の顔がゆっくり近付いてくる。
え。
え………!