第8章 春への道
その後も、月島くんは何かを掴んだのか何度もブロックを決めていて、私としては本当に気持ちの良いゲームだった。
ゲームを終えてコートサイドに戻ってくる月島くんに、興奮しながら声をかける。
「月島くんー!!すごかったねブロック!!」
「言ったでしょ、黙らせるって。」
特に大したことではないように月島くんは言う。
でも、些細な変化かもしれないけど、雰囲気で月島くんが喜んでいるのが分かったので、私はまた嬉しくなる。
しつこく指摘すると怒るかもしれないから言わないけど。
着替えてくる、と言って更衣室へと向かった月島くんの後に、今度はお兄さんが私に話しかけてきた。
「えっと…水沢さん…だったよね?」
「あ、そうです!名前も覚えててくれたんですね、嬉しいです。」
「覚えてるよそりゃあ。だって、あの蛍が連れ歩いてた子だもん!」
そう言ってお兄さんは笑う。
「蛍とはまだ付き合ってないの?」
「え!!は、はい…」
「そっか……あのさ。」
「?」
「あいつ素直じゃないから、なかなか分からないかもしれないけど、水沢さんのこと本当に好きみたいだから真剣に考えてやってほしいんだ。」
真剣なお兄さんの表情に、言葉を失う。