第8章 春への道
ゲームが始まってからそう時間の経たないうちに、月島くんは私の期待通り、やってくれた。
あのおじさんの渾身のスパイクをどシャット!!!
もともとブロックというものは味方が決めると物凄く気持ちがいいけれど、今日のそれはまた格別のものだった。
思わず、大きな声が出てしまう。
「やったああー!!!ナイスブロック!!!」
完璧に止められたおじさんがコートサイドの私に鋭い視線を向けてくるけど、気にしない。
これはただの応援だ。
おじさんへの嫌味なんかじゃない。
…………多分。
思った通り月島くんは、どシャットを決めたあと、例の悪い笑顔を浮かべていて、私はそれを見て笑いそうになる。
強烈なスパイクを決めるより、フェイントやブロックで相手の意表を突いたり、思惑をぶち壊すみたいな攻撃の仕方の方が月島くんには合っているような気がする。
多分、相手を出し抜いた時の快感があるからだろう。
そういうプレーのときのほうが、あの悪い笑顔が出る。